「わ、悪い」
「い、いえ…!」
先輩の顔すら見ることができず、思わず地面を見つめた。
「じゃあ、俺帰るわ」
慌てたように先輩が言った。
「あ!はい」
「じゃあな」
「さ、さよなら」
早歩きで来た方向へ戻っていく先輩の後ろ姿を見つめて、姿が見えなくなると、急に全身の力が抜けて、スルスルと地面へと座り込んだ。
ーーキスされるかと思った。
深く深呼吸をして息を整えるので精一杯だった。
すると、後方からバタンと車のドアが閉まる音がして、こちらに近づいてくる足音が聞こえた。
立ち上がって家の中に入ろうとするも、足に力が入らず立ち上がることができなかった。
家の前で蹲っていると、何かあったんじゃないかと思われるに違いない。
そう思って、グッと力を入れて立ち上がった。

