「わたし、先輩の彼女になれてよかったです」
言うつもりはなかったが、そんな事を考えていると、口から言葉が漏れた。
すると先輩は、少し驚いたように目を丸くさせた。
そっと右手が伸びてきて、わたしの頬に、壊れ物を触るかのように、優しく触れた。
そしてしばらくわたしの頬を撫でると、ゆっくりと顔が近づいてきた。
ーーまさか、と考えると脳裏に二文字の言葉が浮かんだ。
不意打ちで心の準備ができていないわたしは、頭がパニックになった。
胸が弾けてしまいそうなくらい、全身に心臓の音が響いてくる。
これ以上考えていたら、気絶してしまいそうだーーそう思ってぎゅっと目を瞑った。
どれくらい先輩が近づいていたのかわからない。
だけどわたしが想像していたことは起こらなかった。
ガサガサと葉が揺れる音とともに「ニャー」という猫の鳴き声が聞こえてきて、パッと目を開けた。
先輩もその音で、どうやら我に返ったようですぐさまわたしから離れた。

