そうは思っていても、一度引っ込められたその手を自分から握る勇気は出せず、結局握る事はできなかった。
電車に乗って、家に帰る途中の駅で降りた。
そこには大きなショッピングモールがあり、中には映画館が入っている。
「観たいのこれだよね?」
「あ、はい」
事前に先輩に観たい映画を言っていた。
「ちょっと待ってて」
何やら、先に席を予約していてくれていたようで、チケットを発券しに言ってくれた。
「はい」
「ありがとうございます。えっと…いくらでしたか?」
カバンから財布を取り出そうと手を伸ばすも、先輩に止められた。
「いいよ」
「え!?なんでですか?」
「なんでって…彼氏だし、これくらいさせて?」
あ…そっか。友達とはまた違うんだ。
正直言うと、付き合ってから、あんまり先輩との付き合い方に変化がなかった。
もちろん一緒に登下校はしていたけど、手を繋ぐこともなかったし、こうやってデートすることもなかった。

