なんとも言えない空気が流れた。
数秒なのかもしれないし、数十秒かもしれない。


だけど体感的には1分くらいに感じた。


すると、ゆっくりと静かに先輩が口を開いた。

「…正直ダメかと思ってた」

「…え?な、なんでですか?」

「桜木は一ノ瀬君のことが好きだと思ってたから」

「な、なんで悠馬?」

唐突に出てきた悠馬というワードにわたしは驚きを隠せなかった。


「仲よさそうだったし。幼馴染なんだろ?」

「まあ、仲は良いですけど…。でも悠馬とは本当にただの幼馴染で…!」

「俺にはそうは見えなかったからさ」

その先輩の言葉と同時に数人の男女が大声で笑う声が聞こえ、そのせいで先輩の言葉を聞き逃してしまった。


「すみません、今なんて?」

「いや、大したことじゃないしいいよ」
そう言って先輩は優しく微笑んだ。