きっとわたしの心臓も先輩と同じくらい早いんだろうな。
少し冷静になって、なんてそんなことを考えてしまった。
「もし桜木さえよかったら、俺と付き合って欲しいんだけど…どう?」
先輩は優しくわたしに尋ねた。
考えたこともなかった。
誰かと付き合うということ。
付き合っている友達は中学の時からいたけど、特別彼氏が欲しいなんて思ったことはない。
それに部活があったから毎日充実してたし、別に恋愛をしたいとも思わなかった。
そもそも先輩がわたしの事を好きだなんて全く知らなかったし、『付き合って欲しい』なんて言葉がわたしの世界に入り込んでくるなんて思いもよらなかった。
少女漫画や恋愛ドラマなんかは普通に見るし、わたしもいつかは…そういう憧れはもちろんあった。
だけど恋愛をしたい、と本気で思っていなかったからなのか、なんとなく別世界に感じていたのかもしれない。
先輩に告白されるなんて想像したことがなかった。

