「劇って演劇?」
「あぁ」
「悠馬も何か役やるの?」
わたしがそう聞くと悠馬は眉をひそめてさらに不機嫌そうな顔をした。
「…俺のことはいいよ。花音は?」
はぐらかされた、とすぐに気づいたけど、これ以上突っ込んで聞くのは地雷を踏むのと同じ行為だ。
それに、この様子だと、きっと何か役があるんだろうとはすぐに汲み取れた。
それもおそらくかなりの大役じゃないだろうか。
ただ台詞を一言二言話すだけだったら、きっとこんな嫌そうな表情にはならない。
裏方だったら、素直に「裏方」というはずだし、大した役じゃなかったらそれもはぐらかさずに素直に言うと思う。
まあ、文化祭当日になれば、嫌でもわかる。何もしてなくても悠馬は学校で人気があるみたいだし、きっと耳に入ってくるだろう。
そう思ってそれ以上演劇のことには触れないでいた。

