「あなたがお弁当屋ですか。料理の腕はそこそこあるようですし、飲食店で移動販売というのも新しい切り込み方です。これは、大儲けの匂いがしますね」
オリヴィエはなにか企むように目を光らせながら、頼んでいたオレンジ色のエプロンとのぼり旗を差し出してくる。
出来栄えを確認すると、お母さんが使っていたものより手作り感はあるが、それもまた温かみが出ていい。私は制服をそっと抱きしめ、改めてオリヴィエのほうに向き直った。
「ありがとう、オリヴィエ! すっごくかわいい。大事に使わせてもらうね」
「お礼を言っていただく必要はありません。私は代金分の働きをしたまでですから」
淡白な態度をとるオリヴィエだが、わずかに声が震えていて耳も赤い。
実は照れているのかもしれないと思ったら、少しだけ彼への苦手意識が薄らいだ気がした。
オリヴィエのお店を出て、エドガーの家に帰ろうと町中を歩いていたときだった。「あれ、雪ちゃんじゃないか!」
声をかけられて振り向けば、酒場の前で男性が手を振っている。よく見ると、国境付近の駐屯地で知り合った騎士のひとりだった。
「おひさしぶりです」
私は近寄って頭を下げる。
「一ヶ月ぶりだなあ」
「どうしてここに?」
「国境周辺を見回ってた帰りなんだよ。そうだ、雪ちゃんも一緒に飲もうぜ」
騎士は背後にある酒場を親指で差す。
「えっ、いや、私は飲めな──」
「なんだあ、そりゃあ。下戸ってことか? なあに、心配いらないって。すでに下戸なのに酔い潰れてる男がいるからな」
なにが心配いらないのかが、わからない。
私は「未成年なので!」と、なおも食い下がる。だが、騎士は少し酔っているのだろう。軽い調子で、私の肩を抱く。
「みせい、ねん? なんだ、酒を飲めなくなる病気かなんかか?」
「違います! お酒は二十歳からって、法律で決まってないんですか?」
「なに言ってるんだよ、雪ちゃん。酒は飲んでこそ、強くなるってもんだろ? 酒で潰れるなんざ、みっともないからな。だいたいの男は、十代のときから飲んでるぞ」
陽気に教えてくれた騎士の言葉で理解する。異世界では飲酒に年齢制限はないらしい。だからといって、私まで飲むわけには……。
「早く行こうぜ。皆、雪ちゃんに会いたがってる」
「あっ、待って!」
私の制止も空しく、引きずられるようにして酒場の階段を下りていくと、レンガ造りの壁に囲まれた空間に出た。
木製のテーブルに酒樽の椅子が乱雑に並んでいて、大勢の酔っ払いが騒いでいる。
オリヴィエはなにか企むように目を光らせながら、頼んでいたオレンジ色のエプロンとのぼり旗を差し出してくる。
出来栄えを確認すると、お母さんが使っていたものより手作り感はあるが、それもまた温かみが出ていい。私は制服をそっと抱きしめ、改めてオリヴィエのほうに向き直った。
「ありがとう、オリヴィエ! すっごくかわいい。大事に使わせてもらうね」
「お礼を言っていただく必要はありません。私は代金分の働きをしたまでですから」
淡白な態度をとるオリヴィエだが、わずかに声が震えていて耳も赤い。
実は照れているのかもしれないと思ったら、少しだけ彼への苦手意識が薄らいだ気がした。
オリヴィエのお店を出て、エドガーの家に帰ろうと町中を歩いていたときだった。「あれ、雪ちゃんじゃないか!」
声をかけられて振り向けば、酒場の前で男性が手を振っている。よく見ると、国境付近の駐屯地で知り合った騎士のひとりだった。
「おひさしぶりです」
私は近寄って頭を下げる。
「一ヶ月ぶりだなあ」
「どうしてここに?」
「国境周辺を見回ってた帰りなんだよ。そうだ、雪ちゃんも一緒に飲もうぜ」
騎士は背後にある酒場を親指で差す。
「えっ、いや、私は飲めな──」
「なんだあ、そりゃあ。下戸ってことか? なあに、心配いらないって。すでに下戸なのに酔い潰れてる男がいるからな」
なにが心配いらないのかが、わからない。
私は「未成年なので!」と、なおも食い下がる。だが、騎士は少し酔っているのだろう。軽い調子で、私の肩を抱く。
「みせい、ねん? なんだ、酒を飲めなくなる病気かなんかか?」
「違います! お酒は二十歳からって、法律で決まってないんですか?」
「なに言ってるんだよ、雪ちゃん。酒は飲んでこそ、強くなるってもんだろ? 酒で潰れるなんざ、みっともないからな。だいたいの男は、十代のときから飲んでるぞ」
陽気に教えてくれた騎士の言葉で理解する。異世界では飲酒に年齢制限はないらしい。だからといって、私まで飲むわけには……。
「早く行こうぜ。皆、雪ちゃんに会いたがってる」
「あっ、待って!」
私の制止も空しく、引きずられるようにして酒場の階段を下りていくと、レンガ造りの壁に囲まれた空間に出た。
木製のテーブルに酒樽の椅子が乱雑に並んでいて、大勢の酔っ払いが騒いでいる。


