【最新版】異世界ニコニコ料理番~トリップしたのでお弁当屋を開店します~

「オリヴィエは、すごいね」

「なんですか、急に。そんな陳腐なお世辞で、負けませんよ」


 どんだけ疑い深いんだ、この人。値切りは商売の敵とばかりに、睨みつけてくる。


「違うよ。私はただ、ひとりでたくさんお店を経営してるから、すごいなって思っただけ。最終的に大きなスーパーとか、ショッピングモールを作るとか、なにか目標はあるの?」

「その、スーパー、しょっぴ……なんとかっていうのはなんです?」


 あ、異世界にはないんだ。スーパーとショッピングモール。

 うっかり口を滑らした私は、引くに引けず説明することにした。


「スーパーは食品から日用雑貨まで揃ってるお店で、ショッピングモールはそれにプラス洋服屋とか、映画館とか娯楽施設がついてるの」

「えい、が……かん、とは?」

「うーんと、演劇が見られる場所、かな」


 実際は映画が見られる場所なのだけれど、ここにはテレビもないし、きっと映像とか言っても通じないだろう。私に語彙力があればよかったのだが、これが精一杯だ。


「へえ……買い物ついでに演劇も見られる。客足が伸びそうです。あなたの妄想にしては興味深い話ですね。他にはどんなことが思いつきますか?」


 妄想じゃないんだけどな。

 オリヴィエに自分の世界にあるお店やテーマパークの話をすると、目の色を変えて食いついてくる。


「何店舗も店を出し、利益を得ても僕の飢えが満たされることはありません。成功にも達成感が得られなくなってきていたところでした。ですが、あなたの妄想に、ひさびさに商売意欲が駆り立てられましたよ」

「その、飢えって?」

「さあ? それは僕が知りたいですね」


 一瞬、オリヴィエの声が沈んだ気がして、その顔を覗き込むも「それにしても」と話を逸らされてしまった。