「ランチワゴンで、この世界を旅するんだ」
「旅かあ……面白そう!」
子供の頃、家族でいろんなところへキャンプをしに行ったときとは比べ物にならないくらい遠くまで行けたら、楽しいだろうな。
「私、ご当地の食材でお弁当作りたいかも。で、お腹いっぱい食べる」
「いいんじゃない? 食道楽」
「うん! ありがとう、エドガー。私、この世界でランチワゴンを開く!」
拳を握って意気込むと、エドガーが口元をむずむずさせながら笑いを堪えているのに気付いた。
「浮上した?」
気分が、という意味だろう。
「うん、今なら天井突き抜けて、宇宙まで飛べそうなくらい浮上した!」
エドガーから離れて明るく答えると、「う、ちゅう?」と返ってくる。私が空より遥か上に存在する空間であることを伝えると、エドガーは「ロ、ロケットがいる! それも人が乗れるくらい大きいやつ!」と興奮していた。
「エドガーってロケット知ってるの?」
「知ってるもなにも、これから俺が作ろうと思ってる発明品の名前だから。もともと、月に行くための装置を作りたいと思ってたんだ。まだ設計図の段階なんだけど、名付けてロケット。雪の世界にはもうあるの?」
「うん。そのロケットに宇宙飛行士が乗って宇宙に行くんだよ」
エドガーの顔がぱっと輝く。その横で、私はこれからのことを考えていた。ランチワゴンをやるなら、絶対に用意しなきゃいけないもの。それは──。
「まずは、ランチワゴンですよ」
「う、うん?」
私の唐突な呟きに、エドガーは困った顔をする。
この世界は馬車が主な交通手段みたいだし、車はなさそうだ。けれど、エドガーの作業場にはオートモービルがあった。もしかして、エドガーなら作れるのではないだろうか。私は期待を込めて、エドガーを見つめる。
「お願いがあります! これは、エドガーにしか頼めない――というか、エドガーにしかできない!」
「う、うん。とりあえず落ち着いて。それで、お願いって──」
「ランチワゴンを作って!」
エドガーの言葉尻に被せる勢いで言った。エドガーは驚いていたけれど、徐々に嬉しそうに口元を緩め、目をぎらつかせる。
あ、出た。エドガーの発明家モード。
「お安い御用だよ。わかる範囲でいいから、外装の素材と機能を教えて」
「うん! あーっ、どうしよう。すっごく、楽しみになってきた!」
ふたりで作業台の前に立ち、私は紙にランチワゴンの絵を描いていく。
それをもとに隣でエドガーが設計図を作り、あっという間に日は暮れていった。
***
異世界に来てから早くも一ヶ月、私たちはお弁当屋の開店準備に追われていた。
エドガーは一番大変な作業であるランチワゴンの製造にかかりっきり。対して私は弁当箱や持ち運べる椅子やテーブル、制服の手配などに追われている。ちなみに、開店資金は国王からもらった謝礼金をあてることにした。
今日はお母さんがやっていた【ニコニコ弁当屋】の文字と、ニコちゃんマーク入りのエプロンやのぼり旗が出来上がったので、リックベル商店にやってきている。
「ちゃんとお金はあるんでしょうね? まさか、あれだけの大金を国王陛下からいただいておきながら、使い果たしてなどいないでしょうね?」
「ひ、ひしぶりだね、オリヴィエ。うん、お金の無駄遣いはしてないよ」
店主のオリヴィエは会って早々に、畳みかける勢いで毒舌を吐いてくる。
さすがは各国にいくつもある支店を経営するリックベル商店の長。このくらいの図太さがなければ、やっていけないのかもしれない。
「旅かあ……面白そう!」
子供の頃、家族でいろんなところへキャンプをしに行ったときとは比べ物にならないくらい遠くまで行けたら、楽しいだろうな。
「私、ご当地の食材でお弁当作りたいかも。で、お腹いっぱい食べる」
「いいんじゃない? 食道楽」
「うん! ありがとう、エドガー。私、この世界でランチワゴンを開く!」
拳を握って意気込むと、エドガーが口元をむずむずさせながら笑いを堪えているのに気付いた。
「浮上した?」
気分が、という意味だろう。
「うん、今なら天井突き抜けて、宇宙まで飛べそうなくらい浮上した!」
エドガーから離れて明るく答えると、「う、ちゅう?」と返ってくる。私が空より遥か上に存在する空間であることを伝えると、エドガーは「ロ、ロケットがいる! それも人が乗れるくらい大きいやつ!」と興奮していた。
「エドガーってロケット知ってるの?」
「知ってるもなにも、これから俺が作ろうと思ってる発明品の名前だから。もともと、月に行くための装置を作りたいと思ってたんだ。まだ設計図の段階なんだけど、名付けてロケット。雪の世界にはもうあるの?」
「うん。そのロケットに宇宙飛行士が乗って宇宙に行くんだよ」
エドガーの顔がぱっと輝く。その横で、私はこれからのことを考えていた。ランチワゴンをやるなら、絶対に用意しなきゃいけないもの。それは──。
「まずは、ランチワゴンですよ」
「う、うん?」
私の唐突な呟きに、エドガーは困った顔をする。
この世界は馬車が主な交通手段みたいだし、車はなさそうだ。けれど、エドガーの作業場にはオートモービルがあった。もしかして、エドガーなら作れるのではないだろうか。私は期待を込めて、エドガーを見つめる。
「お願いがあります! これは、エドガーにしか頼めない――というか、エドガーにしかできない!」
「う、うん。とりあえず落ち着いて。それで、お願いって──」
「ランチワゴンを作って!」
エドガーの言葉尻に被せる勢いで言った。エドガーは驚いていたけれど、徐々に嬉しそうに口元を緩め、目をぎらつかせる。
あ、出た。エドガーの発明家モード。
「お安い御用だよ。わかる範囲でいいから、外装の素材と機能を教えて」
「うん! あーっ、どうしよう。すっごく、楽しみになってきた!」
ふたりで作業台の前に立ち、私は紙にランチワゴンの絵を描いていく。
それをもとに隣でエドガーが設計図を作り、あっという間に日は暮れていった。
***
異世界に来てから早くも一ヶ月、私たちはお弁当屋の開店準備に追われていた。
エドガーは一番大変な作業であるランチワゴンの製造にかかりっきり。対して私は弁当箱や持ち運べる椅子やテーブル、制服の手配などに追われている。ちなみに、開店資金は国王からもらった謝礼金をあてることにした。
今日はお母さんがやっていた【ニコニコ弁当屋】の文字と、ニコちゃんマーク入りのエプロンやのぼり旗が出来上がったので、リックベル商店にやってきている。
「ちゃんとお金はあるんでしょうね? まさか、あれだけの大金を国王陛下からいただいておきながら、使い果たしてなどいないでしょうね?」
「ひ、ひしぶりだね、オリヴィエ。うん、お金の無駄遣いはしてないよ」
店主のオリヴィエは会って早々に、畳みかける勢いで毒舌を吐いてくる。
さすがは各国にいくつもある支店を経営するリックベル商店の長。このくらいの図太さがなければ、やっていけないのかもしれない。


