ストロベリーキャンドル




*


あれから一週間。
相変わらず仁の記憶は戻らないまま。


あの冷たい仁が日常になりつつある。


会社から理解を貰えて、この一週間は定時で帰ることが出来ていた。


家に帰って仁を迎える準備をする。
仁は仕事の遅れを完璧に取り戻したのか、
いつも夜遅くまで働いてくる。


頭の包帯も取れて、見た目では何かあるようには思えないくらい回復していた。


額に出来た大きな傷跡だけは痛々しく残っているけれど。
 

病院でその後の経過を見てもらおうと言っても、
仁は聞いてくれない。


もうずっと、
仕事のことばかりで頭がいっぱいなようだった。


「仁。そんなに仕事ばかりしていたら疲れちゃうよ。
 もっと、休んだっていいのよ。
 あなたは病み上がりなんだから」


久しぶりに顔を合わせたから、思い切って話しかけてみる。


仁は立ち止まって私を見た。
いつもより、柔らかい瞳のような気がする。


今日はなんだか、話を聞いてくれそう。


「なんであんたに、
 そんなこと指図されなくちゃいけないわけ?」


言葉はいつも通り、冷たい。
でも、なんだか不思議だけれど、今日は押せる気がした。


「何度も言うけど、私は仁と結婚してるから。
 心配するんだよ」


「まだ言ってんの?
 じゃあ、また不倫でもして再婚すれば?」


「そ、そんな……仁」


「分かったよ。今の仕事が落ち着いたら、休みを取るよ。
 でも勘違いするなよ。俺は仕事を休むだけだ。
 あんたと馴れ合いごっこをするつもりはないから」


それだけ言って、仁は自室にこもる。
それだけでも、私は嬉しかった。


仁の心の奥底にある優しさが、
一瞬だけ顔を見せた瞬間だから。