ストロベリーキャンドル




「ザッキーのことも覚えてないってこと?」


「は、はい。もう、私のことは拒絶していて……」


「それは……辛いな。戻し方も知らねぇの?」


「もう何が何だか……
 刺激してはいけない気もするけれど、
 どうやって戻るか分からなくて」


いけない、思い出すと泣いてしまう。


じわりと滲む涙を必死で堪えて、目元を押さえた。
それを見逃さなかったのか、前田さんは私に言った。


「大丈夫。泣いてもいいんだぞ?
 ……なぁ、部長にも話そうぜ」


「えっ?」


「みんなに話して、分かってもらおう。
 残業はさせないようにするし、みんなでザッキーの仕事、手伝うからさ。
 ザッキーはその旦那を気遣ってあげな」


「前田さん……ありがとうございます」


「いいってことよ」


ニヒヒ、と笑う前田さんを見て、少しだけ心が軽くなった。


さっそく私たちは部署に戻って、
部長を含め全員に打ち明けた。


みんなは驚いていたけれど、
前田さんが協力しようと言うと、快く了承してくれた。


任せなさい!と部長は私の背中をバシバシ叩いた。
そしてみんなで、記憶喪失について調べてくれて、
あれがいいとか、これを試したらいいとか、案を出してくれた。


とてもいい職場。
こんなところで働けて幸せだ。


私にはここに居場所があるのだから、
そんなに落ち込まなくても大丈夫よね。


きっと、いい方向に転がっていく。


大丈夫よ。
気を確かに持って、頑張らなくちゃ。