「でもね、君のしたことはいけないことなんだ。
 ちゃんと責任を取らなくちゃいけない。
 ごめんね。そこだけは、守ってやれなかった。
 君は一度に仕事も友達も、慕う上司も失った。
 

 それでも、いつまでも苦しむことはない。
 君にはちゃんと、幸せが待っている」


「で、でも……私は幸せになる資格がないわ」


「そんなことない。一度過ちを犯した人に
 その権利がなくなるなんておかしな話だ。
 君の人生はやり直せる。その方法を一つだけ、俺は知っているよ」


「な、何?」


もう一度、仁は私の涙を拭った。
そして、私にかけていた上着のポケットから
白い箱を取り出して、私の前で開けてみせた。













「俺と結婚しよう。君を一生、幸せにするから」















涙が止まる。驚いて何も言えなかった。
ただ、潤んだ瞳の世界に、仁だけが映り込む。


仁の手にしていた箱の中には、
きらりと光るダイヤモンドがあしらわれた指輪があった。




「返事をちょうだい。ただ、頷いてくれるだけでいい」


仁はまっすぐに私を見つめている。
優しい目が、私を射抜く。


私は、幸せになってもいいの?


この人と一緒にいたら、幸せになれる?


私は、私は……。







震える手を伸ばして、そっと、その箱を受け取った。


「よ、よろしく、お願いします」


その瞬間、優しく彼に抱きしめられた。
温かくて、安心する。


彼は一度私の体から離れると、
そっとキスをくれた。


甘くて、とろけてしまうようなキス。


体中が電撃を打たれたみたいにビリビリきて、
とてつもない幸福感に包まれた。








ああ、これでやっと、私にも幸せが訪れた。
私今、すごく幸せ。


他に何もいらないと思えるくらい、幸せなの。




ねぇ、仁。
私を見つけてくれてありがとう。


私を泥沼から救い出してくれて、
本当に、ありがとう。