ストロベリーキャンドル




ポン、と頭に手を置いて、仁が笑った。
ドクドクと心臓が鳴る。


こんなぞくぞくすること、初めて。


お付き合いを始めてから、何度かその気になって
心の準備をしていたこともあった。


新しい下着を買ったり、ムダ毛の処理を怠らなかったり、
少しでも細く見せようとダイエットしたり。


でも、仁は一向に体の関係を持とうとしない。


何故なんだろう。私に魅力がないせいなの?
と落ち込んだりもした。
だから今も、やっとその気になってくれたのかと、
ちょっと期待したのに。


私の期待はハズレだったようで、結局おあずけだった。


体がその気になって疼いている。
早く鎮めたいのに、その術を知らない。


「そういう顔も、他の男に見せたらダメだよ。奏音」


そういうって、どういう顔?
首を傾げて仁を見つめる。
名前を呼ばれただけで体が熱くなった。


「資料は俺がやっとくから、
 化粧室かどこかで休んでおいで。
 その顔じゃあ、仕事に出られないだろう」


「で、でも……」


「大丈夫。ここは会社だから、控えるべきだったかな。
 悪かったよ。さあ、行って。落ち着いたら、仕事に戻りなよ」


「う、うん……」


なんとか立ち上がって、よろよろと扉へ向かう。
ドアノブを回して扉を開けて、廊下に出た。


梅雨のジメジメした空気が体に纏わりつく。
壁に手をつきながら歩いて、化粧室まで着くと、水を出して手を洗った。


冷たい感触が体の熱を冷ましていくよう。
すぅっと落ち着いて行くのを確認して、ため息をついた。










もっと、触ってほしかった―










一瞬芽生えた気持ちを心の中で反芻させる。


目を閉じると、仁の声が響いてくる。
少しザラザラした舌の感触、ゴツゴツした手、
全てがこの体に残っていた。


この半年、仁とお付き合いをしてきた。
お互い時間のない中、沢山のデートをしてきたし、キスだってした。


私は心のどこかでは葛城さんを思っていて、
仁のことは利用しているような気がしていて申し訳なかったけれど、
私、ちゃんと仁が好きなんだ。


もう仁以外では考えられなくなっているんだ。


体に触れるのも、私を奏音と呼ぶのも、
全部仁じゃないとダメなんだ。


私はやっと、葛城さんの泥沼から抜け出せた。
仁だけをひたすら想っていたら何も怖いことはない。
私も、幸せになっていいのかな。


仁が好き。ずっと一緒にいたい。
私だけを見ていてほしい。


そしてゆくゆくはいつか、結婚も……。