ストロベリーキャンドル




お昼になって、いつもは七海とランチだったのだけれど、
今日は七海が葛城さんと食べたいと言うので1人になってしまった。


コンビニに何か買いに行こうと財布を持ってブースを出ると、
誰かにぐいっと腕を引っ張られた。


小さく声を上げた私だったけれど、
その力に負けて引っ張られるように非常階段へと連れ込まれた。


「か、葛城……さん?」


「しっ。人がそばにいる」


私の腕を引っ張って来たのは他でもない、
葛城さんその人だった。


葛城さんは廊下の方を警戒してしばらく私の口を塞いでいたけれど、
静かになったのを確認するとその手を離した。


「いやあ、七海の目を盗んで来るの、大変だったよ」


「葛城さん。どうしてここにいるんですか。
 七海とランチのはずじゃないですか」


「ああ、でも、お前が気になってさ」


「えっ?」


言うと葛城さんは私を壁際に押しやり、
私の頬に手を当てて、それから目元を拭った。


「泣いた?もしかして、俺のせい?」


バレた。
葛城さんにだけは悟られちゃいけないのに。


「ち、違います。これは昨日、
 観ていた映画が感動して、それで……」


「そんな嘘、すぐ分かるよ。可愛いなぁ、奏音は」


名前を呼んでくれたのに、全然嬉しくない。
なんだか、葛城さん、変。


「俺に捨てられて寂しかった?
 そう怒るなよ。仕方なかったんだ」


「お、奥さんを選んだくせに……
 今更なんなんですか。やめてください」


「それを後悔してるのさ。
 やっぱり、お前といる方が癒されるよ」


ふっと耳に息を吹きかけられて体の力が抜ける。
ずるりと体が崩れると、左手でぐっと私の腰を支えた。
そしていつものように、啄むような別れのキスをされる。


それだけじゃなく、今度はそれが濃厚なものに変わっていった。


私の口内で葛城さんの舌が暴れる。
抵抗しようにもできなかった……いいえ、
本当に抵抗しようとしていた?


私はもしかしたら、
もっと、もっとと求めていたのではなかったの?


「また俺のものになれよ。
 今度は俺、本気で七海との離婚を考えるけど?」


「は……は……」


「あれ?何やってんの?」