それから何度かあの日通った道にあの人がいないか探したけれど、それらしい人物は居なかった。
そして月日は過ぎていき、そんな事を忘れかけていた時。
この高校へ入学して、剣道部へ入り日々練習に取り組んでいた時だった。
「千秋、お前最近プレー調子良いじゃん」
「別に、普通だろ」
その聞き覚えのある声に思わず練習中にもかかわらず道場の外を見つめた。
あの声…あの時の。きっとそうだ、間違いない。
道場の窓から見えるのは、体育館とその窓。
そのかすかなスペースから見えたのは二人組の男の子。
一人は栗色の綺麗な髪をした美男子
そしてもう一人は、漆黒の短めな髪に深く切れ長な瞳をした独特な雰囲気のある男。
男は気怠そうにTシャツで汗を拭うとボールをくるりと抱え込んだ。