開いたままの入口をぼうっと見ていたら、保険の先生が戻ってきた。
「あら、起きたのね。体調はどう?そろそろ下校時間だし、大丈夫そうなら帰りましょうか。雨だし、お迎え呼んだほうがいいかしら?」
「いえ、大丈夫です」
私は首を振って、鞄を手に立ち上がった。
下駄箱まで行って靴を履き替え、傘を開いた瞬間、涙があふれた。
あんなこと言わなければよかったという後悔と、これでよかったんだという安堵が混ざって、傘を伝う雨と一緒に地面に落ちる。校庭には校門に向かう生徒がまばらに歩いていたけれど、私は傘で顔を隠し、声を殺して泣き続けた。
たった1ヶ月一緒にいただけのクラスメイト。それでも私にとっては、たった1人の大事な友達だった。こんなに、失ったことが悲しいと思うくらいに。
今日は遠回りをしようと思った。駅からのバスに乗って、家から少し遠いバス停で降りて帰ろう。
こんな顔を想太に見られたら、きっとまた心配されてしまう。
これ以上、誰にも惨めなところを見られたくなかった。

