三月のバスで待ってる


その時だった。
突然、静寂を切り裂くように、携帯が鳴り響いた。
私はほとんど無意識に携帯を手に取り、画面を開いた。
そこに表示されていたのはーー

『三住想太』

息が止まりそうだった。
隣に座る深香が、もしかして、という視線を送ってくる。私は頷いた。
どくどくと波打つ鼓動をどうにか抑えて、通話ボタンを押した。

『……深月ちゃん』

電話の向こうから聞こえてきた大好きな人の声。その声が耳に響いただけで、泣きだしそうだった。

「はい」

涙がにじむ声で私は答えた。

『連絡くれたのに、返せなくてごめん』

「……いいです、いま、くれたから」

想太に会える日を待って、連絡がくるのを待っていた、ひどく長く感じた1か月。でも、たった1か月だ。この瞬間のために待っていたんだと思えば、そんなの一瞬と言ってもいいくらいだった。

深月ちゃん、と想太は改まった声で言った。

『君に、話したいことがあるんだ』

「……はい」

その声色で、なにか、大事なことを言おうとしているのだとわかった。

『明日の朝、いつものバス停で待ってて』