三月のバスで待ってる




土曜日。
「おはよー」
「寒ーい!」
駅前の待ち合わせ場所に4人で集まって、話しながら会場まで歩いた。強い風が体に当たって通り過ぎていく。少しでも口を動かしていないと顔が凍りそうだった。
ようやく会場のビルに入って、よく効いた暖房にかじかんだ体が息を吹き返すみたいに緩んだ。
早めに来たのに、すでに多くの高校生たちがロビーに集まっていた。集団で話している人、お茶を飲みながら勉強している人、様々だ。
「うわあ、すごい人」
「本番ってこんな感じなのかなー」
「なんか人が多いってだけで違うよね」
「えーと、うちらの教室は5階だね」
しっかり者の上原さんが、事前に配られたプリントを見て言う。
エレベーターで5階にあがり、指定された教室へ行く。
教室にもすでにたくさんの人が来ていた。
自分の席を探していて、私はあるところで視線を奪われた。
教室の壁にもたれて話している集団。

ーーなんで、なんでここにいるの?

温まりかかた体から、一瞬で熱が奪われる。
遠目からでもすぐにわかった。
あの人たちは、彼女たちはーー
その時、その中のひとりが、こっちを見た気がした。
その瞬間、私はその場にしゃがみ込んだ。
目を合わせたくなかった。鼓動が尋常じゃなく速く全身から鳴っているように聞こえる。
「深月!?どうしたの?気分悪い?」
杏奈が気づいて背中に手を当てた。
「おい、こんなところで座るなよ。邪魔なんだけど」
「自分の席で座れって」
後ろから迷惑そうな声がする。
「すみません、この子気分が悪いみたいで」
杏奈が背中をさすりながら庇ってくれるけれど、
「じゃあさっさと帰ればー?」
と笑いながら押しのけて入っていく。
杏奈はその集団の後ろ姿をキッと睨んで、
「あんなやつほっとけばいいから。大丈夫?立てる?」
と声をかけてくれる。
ーーだめだ。全然、ダメだった。
やっと逃げられたと思ったのに、また。
「……うん」
全然大丈夫ではなかったけれど、私はゆっくり立ち上がった。
ーー大丈夫。
冷静に考えれば、見なければいいだけだ。視界にすら入らなければいい。そして終わったらすぐ帰ろう。それなら、きっと大丈夫なはず。