階段を上がって、二階の右の手前のドア。

圭吾の部屋は、案内されるまでもない。


どうしてこんなことになっているのだろうかと思いながら、窓から見えるかつての私の家をぼうっと眺めていたら、圭吾が飲みものを持ってきてくれた。



「おー、泣き止んだか」


ペットボトルを差し出された。

さすがに申し訳ない気持ちでそれを受け取りながら、「ごめん」と返す。


圭吾は気にせず、私と同じように窓の外を覗いた。



「隣の家な、あのあとわりとすぐに売れたよ。ほら、このへん、学校も近いし、人気のエリアらしいじゃん?」

「今は小さい子がいるんだね」

「小学2年だっけな。3年か? 引っ越してきた頃はまだちんちくりんで、俺らも昔はこんなんだったなぁ、とか思い出したりして。何でだか俺、妙に懐かれてんだよなぁ」

「あぁ、男の子は年上のお兄ちゃんに憧れるっていうもんね」


何気なく言った私に、圭吾はふっと笑って見せた。



「自転車の色でそう思った? でも残念ながら、男の子じゃなくて、お前と同じ、青色が好きな女の子だよ」

「えっ」

「あ、違うな。お前は『青色』じゃなくて『よく晴れた青空みたい色』だっけ? 全然違いがわかんねぇやつな」