そのあとは、食事は軽く済ませ、ふたりで街を歩きながら、ウインドーショッピングを楽しんだ。
いや、楽しんだのは山西くんだけだったかもしれないけれど、でも私だってそれなりに楽しそうに見えるようには振る舞った。
そして、夕方。
「沙奈ちゃん、時間ある? 晩飯も行くっしょ? 昼はあんまり食べてないから、夜は何かがっつりいきたいよな」
無邪気に言う山西くんは、私の気なんて知らない。
本当にもうこれ以上は、一緒にいるのがしんどかった。
「ごめん。うち、門限厳しいんだよね。お母さんも晩ご飯用意してくれてて、早く帰ってこいって言われてるし」
そう言った私の言葉を疑うことなく、山西くんは残念そうに、「そっか」とだけ。
これでやっと帰れるなと思った私に、山西くんは、
「じゃあ、これ受け取ってよ」
と、ポケットから取り出したものを、私に差し出した。
ピンクのクマのキーホルダー。
「これ、さっきの店で買ったんだ。覚えてるっしょ? 沙奈ちゃん、クマ好きって言ってたから、これがいいかなって」
私がトイレに行っている間に?
確かにクマが好きだとは言ったけれど。