「沙奈ちゃんが優しいのは知ってるけど、ああいうのは、放っておいた方がいいんじゃないの?」

「………」

「ほら、ウイルス性のものとかだったらこっちまで移されるかもしれないし、下手に助けて何かあったら責任取らされるかもしれないっしょ? だからああいう時は、何もせずに看護師さんとかお医者さんとかを探して、今みたいに任せた方がいいと思うよ」


確かに、山西くんの言いたいことはわかる。


私だってウイルス性のものは怖いし、移されるのも正直困る。

けど、でも、あんな緊急事態の時にそんなこといちいち考えていられなかったし、目の前で人が苦しんでたら、助けたいと思うものじゃないのか。



「そういう言い方ってないと思うけど」


ぼそりと呟く私。

しかし山西くんはそれを聞いていなかったらしく、あからさまに不機嫌な顔になった。



「あーあ、せっかくこれから飯行こうと思ってたのに、おっさんのゲロ見て食欲なくなったわー」


頭が痛い。

食欲がなくなったのはこっちも同じだと思ったが、喧嘩したいわけじゃないので、私は言いたい言葉を飲み込んだ。