【短編】澱(おり)

「どこ行く? 何食べる? 沙奈ちゃんの好きなもんにしようよ」

「うーん。どうしよっか」


言いながら、ふたりで歩いている時だった。


突然、向こうから歩いてきていたおじさんが、「うっ」と胸を押さえて苦しみ出した。

私たちがぎょっとして足を止めると、おじさんはそのままその場にうずくまり、「ううっ」とまた声を上げて、今度は嘔吐した。



「えっ、ちょっ、大丈夫ですか」


慌てて駆け寄り、私はおじさんの背中をさする。

しかしどうしたらいいのかわからずに顔を上げると、女性のグループがきてくれた。



「私たち、看護師です。どうしましたか」

「あの、えっと、このおじさん、歩いてたら急に胸を押さえて苦しみ出して、それで、その」

「わかりました。代わります」


場所を代わると、女性のグループは互いに指示を出しながらてきぱきと動き始めた。

近くに専門家がいてくれたことに、私はほっと安堵した。


後ろで状況を見守っていたら、



「沙奈ちゃん」


と、山西くんに声を掛けられた。



「大丈夫?」

「え? あ、うん」

「ならいいけどさ? でもすごいね。ゲロとか気持ち悪くないの?」

「……え?」


何を言われているのかわからなくて、一瞬、固まる私。

しかし山西くんは、怪訝に眉根を寄せながら言う。