私の言葉に、しかし結衣はまったく納得していないような顔だ。



「それで、何であの、山西くん? ああいう暑苦しい体育会系みたいなのは、沙奈とは合わない気がするけど」

「そう?」

「そうだよ。たまたまコクってきたのが山西くんだっただけで、今の沙奈の言い方だと、誰でもよかったようにしか聞こえないし」


相変わらず、結衣は私の痛いところばかり突いてくる。

が、私なのに考えてのことだ。



「別にいいじゃん。仲よくならないとわからないことだってあるし。それにさ、すぐに付き合うとかじゃなくて、まずは友達になっただけだし、結衣に文句言われることじゃないよ」


背を向けた私に、結衣は言った。



「ねぇ、やっぱりあの日、圭吾くんと何かあったから、沙奈はいきなり誰かと付き合うとか言い出したんじゃないの?」


本当に、ちくちくちくちくと、痛いところばかり突いてくる。

私は何も返せないまま、「そろそろ電車の時間だから」と、逃げるようにホームに向かった。



私は、あんなことがなかった未来を生き直したいだけなのに。

結衣の望み通り、ちゃんとカレシを作ろうとしているのに。


なのに、何がダメなのかわからない。



圭吾が残した痛みは、もう完全に私の体から消えていた。