瞬間、山西くんは「よっしゃー!」と叫ぶ。

私はバッグからノートを取り出し、端を破ってメッセージアプリのIDを書いて、それを山西くんに手渡した。



「連絡してね」


そうとだけ言い、私が歩き出すと、慌てた結衣も追いかけてきた。



「ちょちょちょ、待って! 沙奈!」


ホームに向かおうとしていた私を、結衣は強引にトイレに連れ込んだ。

言われるであろうことはわかっているけれど。



「何あれ、どういうこと!?」

「何が」

「告白なんて、今までは相手が言い終わるより前に断ってたのに、何で!? ついこの前まではカレシなんかいらないとか一生ひとりで生きていくとか言ってたくせに、IDまで渡しちゃってさ、わけわかんないんだけど!」


詰め寄ってくる結衣。

私は大きなため息を吐いた。



「確かに私は結衣が言った通り、過去のことの所為で恋愛とかそういうの全部否定してた。でも、だからこそ、乗り越えるためには誰かと付き合ったりとかしてみるのもありなのかなって」

「はぁ?」

「食わず嫌いはよくないっていうか? そもそも、誰とも付き合ったことないのに恋愛を否定すんのもおかしいのかなって思ったからさ」