「あの、俺、東高1年の山西っていいます。山西 潤です」

「はぁ」

「いきなりなんですけど、あなたのことが好きです。付き合ってください」


大声で言われて、頭を下げられた。

私と結衣は、急な出来事に驚き、顔を見合わせる。


駅の往来で、人の目が痛いのだけど。



どうしたものかと思い、私たちが何も言えないでいると、彼は――山西くんは、さらにたたみかけてきた。



「えっと、急にこんなこと言われて困るのはわかります。でも俺、たまに帰りの電車であなたと一緒になることがあって、初めは可愛いなとか思ってただけだったんですけど、当たり前みたいにお年寄りに席を譲ってたり、泣いている小さい子供に飴あげてたりする姿を見て、すごく好きになったっていうか」

「………」

「あ、もちろん俺のこと知らないから付き合うとか無理だって言われると思います。なので、最初は友達からでもいいです。とにかくあなたと仲よくなりたいし、俺のことも知ってもらいたいです。よろしくお願いします」


山西くんは、一気に言って、また私に向かって頭を下げた。

しばらく考えてから、私は「わかった」と返す。



「じゃあ、とりあえず、友達からってことで」