「この頃、まだ沙奈のが背高かったよな」

「そうだよ。いつの間に抜かしたの?」

「さぁ? 気がついたら小さくなってたもんな、お前」

「何で私が小さくなるのよ。圭吾が勝手に大きくなっただけでしょ」

「3年? 4年生くらいからクラス離れてあんま喋らなくなったんだっけな、俺ら」

「学校終わってからも圭吾はずーっとサッカーやってて日が暮れるまで帰ってこなかったし。ほとんど顔も合わさなくなったよね」

「女子と話したら冷やかされるみたいなやつも、今考えたら意味わかんねぇよな」

「あったねぇ。謎の男女の対立。5年生だっけ? あれ、やばかったよね。男子と仲よくしてたらハブられる、みたいな」

「そんなんどうでもいいから、もっと沙奈と一緒にいりゃよかったんだよな」


圭吾の言葉に、私は泣きそうになった。

ふたりで思い出を辿る度に、封印していたはずの記憶が蘇ってくる。



「今だから言うけど、私、あの頃、圭吾のこと好きだった」


呟いた私に、しばらくの沈黙の後、



「じゃあ、俺ら、両想いだったんだな」


と、圭吾も言った。


驚いて顔を上げると、近い距離で目が合った。

雨は今もうるさく窓を打ち続けている。