「何これ。どういう状況?」


いぶかしく問う私に、結衣は急に両手の平を合わせた。



「ごめーん、沙奈ぁ。これには深ーいわけがあるっていうかぁ、別に騙すつもりはなかったんだけどぉ」

「いいからちゃんと話しなさいよ」

「えーっと」


しかしそのまま口ごもる結衣。

わけがわからないと怒ろうとしたが、でも後ろの木の陰から出てきた人を見て、すぐにすべてが繋がった。


圭吾だった。



「俺が沙奈ともう一回ちゃんと会いたいと思って、ふたりに頼んだんだよ」


夜だし、街灯の明かりが届かない木の陰に圭吾がいたなんて、まったく気付かなかった。

まぁ、きた瞬間にその存在に気付いたとしても、どうしようもなかっただろうけど。



「私は会いたくないって言ったはずだよね? なのに、こういうやり方って卑怯じゃないの?」


結衣と翔太くんも、結局は圭吾の味方だったのかという不満もあった。

苦々しく言う私に、ふたりは焦りながらも足を引く。



「だから、ごめんってばぁ。ね? 沙奈の気持ちもわからないわけじゃないけど、うちらだって頼まれたら断れないじゃん?」

「そうだよ。俺、今度お詫びに奢るから。許してよ、さーちゃん」