久々の学校。

 結愛さんに会ったら
 どんな顔をすればいいかわからない。


 友達みたいに
 笑顔で話しかければいいのか。


 それとも
 無視すればいいのか。



 俺が廊下を歩いていた時
 前から結愛さんが歩いてきた。


「十環くん、久しぶり」


 今までと変わらず
 俺に天使みたいに柔らかい笑顔を
 向けてくれた結愛さん。


 その笑顔を見たとたん
 抑え込まなきゃと思っていた
 結愛さんへの思いが込み上げてきた。


 やっぱ俺……


 結愛さんのこと
 大好きでしかたがない……


 俺も笑って『久しぶり』って言わなきゃ。


 そう思ったのに。



「結愛先輩
 会長の仕事でわからないことがあって」


 結愛さんの後を引き継いだ
 現生徒会長が俺たちの間に入ってきた。


「あ、光太くん。お疲れ様。

 わからないことろは
 今から生徒会室で聞くね。

 十環くん、じゃあね」


 俺に向けた笑顔と全く同じ笑顔を
 現生徒会長に向けた結愛さん。


 そして二人並んで
 俺の前から去っていった。



 やばい。

 苦しい。

 胸が押しつぶされそうなくらい苦しい。



 もう結愛さんは
 俺だけの物じゃない現実。

 それを今、目の当たりにした。