「ちょっ、ちょっとチーフ!
私、嫁になるなんて言ってないし、なんで私が此処に住むことになるんですか⁉︎
勝手に決めないでくださいよ⁉︎」
「俺の事教えるって言ったろ?」
「ええ。だからって…」
(なんで一緒に住まなきゃいけないのよ⁉︎
ホント意味わかんない!)
「兎に角、下ろしてください‼︎」
「もう少しだから大人しくしてろ!」
奥座敷を出ると更に渡り廊下を渡った離れへと連れて来られた千夏は、閉まった襖の前でようやく下ろされた。
「ここが俺の部屋だ」
(え?うっわー!)
そして、下ろされると同時に、木ノ下が部屋の襖を開けた為、千夏は部屋の敷居に躓き、部屋へと飛び込む状態になったが、部屋には既に布団が敷かれていた為、千夏は布団の上に横わる状態となった。
(えっ⁉︎)
「…ヤ、ヤクザのやり方って…」
千夏は慌てて起き上がると、身を守ろうと手で体の前を隠す様にして、木ノ下を睨みつけた。
(こんなやり方…酷いよ…)
尊敬すらしていた木ノ下のあまりにも理不尽極まりないやり方に千夏の目からは涙が溢れてきた。
「…うさぎ?」
「私…無理やり組まで連れて来られても、何処かでチーフの事信じてたのに…
なんで…こんな事するんですか⁉︎
こんなの私が知ってるチーフじゃない‼︎
私の知ってるチーフは…
私の知ってるチーフは人の気持ちの分かる人です!」
身を守ろうとしていた千夏の手は、いつの間にか顔を覆い、子供の様に泣き叫んでいた。
そんな千夏を木ノ下はそっと抱きしめ、怖がらせて悪かったと謝ってくれた。
「じゃ、なにも…ヒクッ…しませんか?」
「しない」
「ヒクッ…ホントに?」
「ああ」
「ホントの…ヒクッ…ホント?」
「あんまりしつこいと、ホントに襲うぞ?」
「ダメ!」
「ほら、ティッシュで顔を拭け!鼻水出てるぞ!」
木ノ下は千夏にティッシュを渡すと、飲み物を取って来ると言って、部屋を出て行った。

