この男、危険人物につき取扱注意!


食前酒のシャンパンから始まり、料理に合わせて白と赤のワインを飲み、千夏の頬は赤く染まっていた。
そして、フルコースの終わりを知らせるデザートとコーヒーが運ばれ、千夏がコーヒーも飲み終わりカップをソーサーに置いた時、気配を感じさせずシェフの秦と坂下の二人がテーブルにやって来ていた。


「お味は如何でしたでしょうか?」と千夏の後ろから木ノ下へ声を掛けたのは秦だった。

「っ⁉︎」(ビックリした…全く気配感じ無かった…)

「ああ、美味かった。うさぎはどうだった?」

「…とても美味しいかったです。
こんなに楽しませて頂けるお料理は、久しぶりに食べました。
どちらのお店に修行(いら)したんですか?」

と、千夏は振り返り秦に聞くが、

「何処の店にも世話になってません
俺の料理は趣味ですから」

と、千夏と目を合わせる事もなく秦は答えた。

(えっ修行もしないで?
これが趣味?…嘘でしょ…こんなの趣味の域超えてるでしょ?
三つ星レストランなんて目じゃないよ!
でも…ただ一つを除いては…)

「じゃ、秦の料理は合格か?」と千夏に聞く木ノ下。

「え?」(合格ってなに…?)

「うさぎが秦の料理に点数を付けるなら、なん点だ?」

(いやいや…私如きが点数なんて…
付けれるわけないでしょ!…ただのOLなんだから)

「…勿論、100点ですよ!」

「うさぎ、俺は嘘は嫌いだ」と真剣な眼差しを向ける木ノ下。

(嫌いだって言われてもなぁ…)
「…私になにを…?」

「これは秦のテストでもあるんだ」

(テスト…?)

「うさぎなら、俺じゃ気付かない事も秦に教えてくれると思って連れて来た」

(教えるだなんて…
でも、私が教えれる事…って言うと…
ひとつだけだよ?)

「何点が合格か分かりませんが…
あえて点数を付けろというなら…
そうですね、80点でしょうか?」