「素敵な夜景をありがとうございます」
「気に入ったか?」と聞く木ノ下に、千夏は自分が拉致されて来た事を思い出し「あっ」と叫び口を塞いだ。
(まぁいっか…?
それはそれ、これはこれだよね?)
「拉致られた事、まだ、私怒ってますからね!
まぁ、この素敵なレストランと、綺麗な夜景に免じて許してあげますけど…
二度とこんな事しないで下さい!」
千夏の言葉に善処すると言う木ノ下に、千夏はもう一言付け加えた。
「チーフ、こんなに素敵な場所で食事するんですから、その眉間のシワやめませんか?」
と、千夏は左隣りに座る木ノ下の眉間へと人差し指を伸ばした。
その際、運悪く千夏の腕はシャンパングラスに当たり倒れそうになったのを、丁度前菜を運んで来た秦が受け止めてくれた。
「あっ!すいません…」
「………」
一瞬、秦は、謝る千夏の顔を見はしたが、直ぐに木ノ下へ前菜の説明を始めた。
(ナニよ!謝ったじゃん!ホント感じ悪!)
「…チーフ、眉間にシワ寄せる様になったのって、いつからですか?」
「覚えて無い」
(そりゃーそっか…
本人も無意識にやってるんだろうから…?)
そんな二人のやり取りを見た秦は、千夏へ鋭く冷たい視線を向けていた。

