つい先程まで千夏の頭を悩ませていた張本人である木ノ下に、みんなの前で抱きしめられ、恥ずかしさや困惑、いろいろな感情が千夏の中に湧き上がっていた。
(あんたは…社員の尊敬する社長で…上司…そして嶋田君の想い人…?)
「スケベ!」
「はぁ⁉︎」
「いきなり抱きしめたりしないで下さい⁉︎
これ、セクハラですからね!」
「巫山戯るな⁉︎
立ってるのも辛いだろが?
体調悪いのに無理するな…うさぎ…?」
心配そうに千夏の顔を覗き込む木ノ下に、千夏は思わず目を逸らした。
「…体調なんて悪く有りません!
坂本君の事が…」
止まりかけていた涙が再び溢れ、千夏は手で拭った。
「坂本に何かあったのか⁉︎」
「坂本君が…坂本君が…グスン」

