木ノ下の真意が分からない千夏は、不本意ながらも知られてしまった嶋田に、木ノ下と同じ男としての意見を聞こうと声を潜め嶋田に質問した。
「ねぇ同じ男としてどうよ?」
「何がですか?」
「付き合ってもない女に、いきなり結婚って迫れるもん?」
「まぁ、状況にもよると思いますけど?」
「状況ってどんな?」
「色々あるんじゃないですか?」
「例えば?」
「…例えば…一目惚れ?」
「えっ⁉︎
一目惚れで、あんたいきなりプロポーズできんの?」
「だ、だから例えばって話ですよ!」
「例えばね…?
でも、私とチーフの間にそれは無いなぁ。
出会った時のお互いの印象は酷かったし、あれから随分経つのに今更それは無いわ…
他には?」
「家の都合で…とか?」
「家の都合…?」
(家業の都合って事?)
「でもさ、いくら家の都合だったとしても、相手の事何も知らなかったら結婚なんて出来ないでしょ?」
「チーフは貴女の事、仕事中もよく見てましたから、よく知ってるんじゃ無いですか?貴女の事は!」
「え? そうなの?」
(そんなに見られてたの?)
「でもどうして、嶋田君がそんな事知ってるの?」
(それって、チーフの事よく気にして見てないと分からないよね?)
「もしかして、嶋田君…チーフの事…」
(好きなの…?)
「…し、知りませんよ!」と言った嶋田の顔は赤かった。
「だって、いま…」
(チーフがよく見てたって…
チーフの事、気にしてないと気づかないんじゃ…)
「同じ男でも…
チーフと僕は、全く別の人間なんです!
チーフの考えてる事なんて、僕に分かるわけないでしょ⁉︎」と嶋田は語尾を荒げた。
「あ、うん。そうだね…ゴメン…」
(なんか怒らせちゃった…?)
「そんなに気になるなら、直接聞くなり、付き合ってみたらどうです?期間限定でっ⁉︎
そしたら、分かるんじゃないですか?
あの人が何を考えてるのか?
…どんな人間なのか?」
(確かに…さっきは、突然だったし…
全く思いもしてなかったから、ちゃんと話も聞かずに逃げて来ちゃったけど…
一時的にでも、どうしても誰かと結婚しないといけない訳があったのかも…)

