クビだけは免れたい千夏は、どんな判断が下るのかと緊張しながら今か今かと待っていた。


「うさぎ、本当に辞めるのは辞めたんだな?」

「ふぇ?」

副社長が居るとばかり思っていた千夏は、そこに居たのが木ノ下だと分かり惚けた声が出てしまった。

(なんで?)

「あの…副社長は…?」

「代々木代には、関さんを捕まえに行ってもらった」

「行ってもらったって…副社長にですか⁉︎」

「ああ、そうだが?何か問題でも?」

(ああ、って…)

木ノ下の言葉に千夏は言葉を失っていた。

「副社長と言っても、俺からしたら部下には違いないからな?うさぎの指示で動いといて、社長である俺の指示で動かないって訳にはいかんだろ?」

(…まぁ言い分としては正しいのかも知れないけど…もっと他にやり方あるんじゃない?
一顆(うち)の人間を使うとか?
まぁ、関さんと面識があるのは副社長だけなんだけど、でも…)

「副社長がいっらしゃらないのでしたら、私は仕事が有りますので失礼します。
副社長への謝罪はまた後日いたします」


踵を返し部屋を出ようとする千夏へ「待て!」と声が掛かった。


「話があるのは俺だ。兎に角そこに座れ!」

(そっか…会社の長はこの人だった…
副社長が居なくても、私の処分はこの人がするんだ…)