(お兄ちゃん達の事は信頼してる。
血の繋がらない私達は、幼い頃から人一倍絆を大事にして来た。でも…)


千夏は本当に良いのだろうかと木ノ下の顔を見た。そして、木ノ下が頷くのを見て千夏はドアのロックを解除し琢磨達を部署内へ招き入れ様とドアを開けると、部署内は何時にも増して騒然としており、何事かと思っていると一斉に千夏へ助けを求める声が飛んできたのだ。


「ちょ、ちょっと皆んな落ち着いて!
一人ずつ話してくれないと分かんない!」

(チーフが後ろに居るんだからチーフに言えば良いのに…)

「小野田さん、どこ行ってたのよ⁉︎
携帯の電源くらい入れとくれないと困るでしょ!」と先輩の一人が千夏を責める。

(え?電源なら…)


千夏は自分の携帯を確認するが、切った覚えなど無いのに携帯の電源は切られていた。


(え?なんで…)

「システムがバグってるみたいで、取材班からの写真がとりこめないのよ!
これじゃ仕事なんない!」

「えっ⁉︎
だったら直ぐシステム部に連絡を…」

「勿論連絡したわよ!
でも、システム部も忙しくて誰も手が外せないらしくて、自分達でなんとかしろって!」

「えっそんな…」


千夏は自分のデスクのパソコンの電源を入れると、確かにシステムエラーを起こしていた。だが、システム部が動けないと言うなら自分達でなんとかしなくてはと思った千夏は、木ノ下を見るが木ノ下は顔を背けており、助けるつもりはない様子だった。


(手を貸すつもりはないって、事ですね⁉︎)


千夏は木ノ下に頼るのを諦め、猛スピードでキーボードを叩き自分で出来る限りの事をした。
そして、10分後千夏はエンターキーを押した。


「出来た…」

千夏の言葉に皆んなは自分のパソコンを確認し「直ってる!」「おー流石!」と喜びの声を上げるのと同時に千夏へ拍手を向けた。


(え…?)

「嘘…なんで」


初めて向けられる同僚からの拍手に、千夏は動揺を隠せずにいた。
そんな時、休みを取っていた伊藤美咲が慌てる様に部署(へや)に飛び込んで来た。