その後、電話を終わらせた木ノ下に千夏は見つかってしまった。
「盗み聞きが趣味とは知らなかったが?」
「…………」
木ノ下の言葉に先ほどの事もあり、千夏は何も言い返す事が出来ず、ただ木ノ下の顔を見ていた。
「なんだ?」
「…別に…なんでもありません…」
聞きたい事は沢山あると思いながらも、千夏は口を噤んだ。
(あの男達が言ってた差桜良朱音って、やっぱりチーフ…じゃなくて、社長を訪ねて来たあの差桜良朱音さんの事だったんだよね…?
でもなんで…?
もしかして…私が見た刺青と関係してるの?
皆んなが噂してた様に…チーフは…)
気になり立ち止まって考えていた千夏は、「おい!何してる行くぞ?」と呼ばれ、千夏は慌てて返事をして木ノ下の後に付いて代々木代の部屋に入った。
(えっ…なんで⁉︎)
二人を待ち構えていたのは副社長の代々木代と、そして千夏の兄である琢磨と信二だった。
「な…なんでお兄ちゃん達がここにいるの⁉︎」
千夏の問いかけに、二人は帰りの遅い千夏を心配して迎えに来たと言う。そして、屋上にヘリを待たせてるから早く帰り支度をと言った。
(さっきの『許可して良い』ってお兄ちゃん達の事だったの?
いくらなんでも…ヘリで乗り込んで来るなんて非常識にも程がある‼︎)
「いくら私の帰りが遅いからって、会社まで乗り込んでこないでよ‼︎
ここは私の職場なんだよ‼︎
帰りが遅いからって…何処の誰が、妹を迎えに来るのにヘリなんて使うのよ⁉︎」
ここが副社長室だというのも忘れ、千夏は二人に激怒した。
副社長の代々木代が千夏の怒りは鎮めようとするが、千夏の怒りは収まらなかった。
と言うのも、ヘリを飛ばすには許可申請をしなければいけない。
しかし、国土交通省の許可を取るのには1~2週間が必要とされている。という事は、この飛行が無許可飛行で無いならば、千夏の誕生日であるこの日の為に、前もって許可申請していた事になるのだ。
「ヘリはそんな簡単に使って良いもんじゃない!
緊急を要する時に使うものよ!
だから、お母さんだって絶対に使わないじゃない!
万が一、ドクターヘリの障害にでもなったらどうするの⁉︎
人の命に関わるのよ⁉︎
こんな都心部にまで来るなんて信じられない!」
*ドクターヘリ以外の離着陸は航空法で禁止されていて、事業のために必要な場合等は、許可を得て飛行場以外の場所での離着陸が可能とされている。
また、構築物上(屋上)では許可されないので都市部では実質的に ヘリコプターは離着陸できない。

