千夏の言葉に、その場に居た全ての同僚が一瞬言葉を失って居た。だが、直ぐに女性陣だけでなく男性陣からも、冷ややかな視線と『冷たい女…』『あれじゃ結婚出来ないわ!』『俺、あんなキツいの無理』『あれじゃモテなくて当然だわ』『彼氏なんて出来ないでしょう』などと、言葉の槍が千夏めがけて飛んで来たのだ。
現在、彼氏無しの千夏ではあるが、付き合った経験も、結婚願望も人並みにはある。寧ろ、千夏の結婚願望は他人《ひと》より強い方だった。
だが、今まで付き合った彼《ひと》と長く続いた事は無く、ましてや結婚話がでた事は一度も無い。
いつも、デートらしいデートもしないうちに浮気されるか、音信不通になって終わってしまっていた。
ひどい時は、出会った翌日に『ごめん、無かった事にしてくれ…』と電話で別れを告げられた事もあった。
自分にはそんなに魅力が無いのかと、千夏も悩んだ時期もあったが、母の様に器量良しでもなく、自分程度の女を敢えて選ぶ男はいないのかもしれないと諦めて居た。
それでも一縷の望みを抱いて時間が合えば婚活パーティーや、合コンの誘いがあれば出来るだけ参加するようにしていた。しかし、その合コンも最近は誘われる数も減って来ていた。
以前、千夏は友人のひとりに、良い男は千夏が独り占めするからと言われた事がある。
だが、千夏には彼女の言葉の意味が分からなかった。
千夏としては、独り占めしようなんて全く思ってない。
他人より劣るがゆえに必死にメイクや髪型、服装に多少気を使い、少しでも相手に良くみせようと偽りの姿を作っている。
それは、千夏の友人達も同じ筈である。
千夏からしたら、相手が来るのに拒む理由が無いと言ったところで、千夏が悪い訳ではない。

