「…チーフ?」
「もう泣かないでくれ…男は女の涙に弱い。
特に俺はうさぎの涙に弱い。
どうにかなってしまいそうになる」
「…拡君からは何も聞いてません」
「じゃ、誰から」
「私、見たんです。
お二人が…」
「二人?」
「…チーフと坂下さんが…キス…してるところ」
「はぁ?
俺と坂下がキ…キス⁉︎」
「それから、坂下の言動からお二人はそう言う関係なんだと…
近頃ではBL漫画やおじさんラブだとかのドラマなんかも人気もありますけど、現実はまだまだ受け入れられていません。
外国では同性同士でも入籍も出来きるところも、籍は別々でも、公の場でパートナーと紹介し参加する事は珍しく有りませんが、日本はその辺りはまだまだ遅れてます。
ましてや、組長さんの様な年配の方には受け入れ難い事だと思います。
だから、良からぬ噂を払拭する為に仕方なく偽装結婚なんて事考えたんですよね?
愛を貫くって素晴らしいじゃないですか?
何も恥じる事はありません!
愛の形は自由だと思います!
私は応援します!協力もします!
でも、監視下におかれる様な事は嫌です」
熱弁する千夏を、春樹は冷ややかに見つめ大きなため息を吐いた。
「あのな…」
「嶋田君には申し訳ないですけど、私は坂下さん推しです!」
「嶋田…?」
「ええ。嶋田君もチーフの事が好きみたいで、よくチーフを見つめてるんですよ!
やっぱり、チーフ気づいてなかったんですね?」
「アホ! 嶋田はお前…」
「え?なんです?」
「いや、なんでもない」
「嶋田君には、チーフの相手は何かと荷が重すぎると思いますから、可哀想ですけど諦めて貰いましょう?
まぁ、少なからずショックは受けると思いますけど、その辺は私がちゃんとフォローします!」

