菅原とは同じ部署とはいえチームが違う為、千夏はほとんど話した事がなかった。
人手が足りず皆んなが大変な思いをしてるだろうから、急ぎたいと思っている千夏に対して、菅原はここぞと言わんばかりに話しだした。
「ちょうど、ウチのチームの女の子達は夏休みとってて、皆んなで旅行行ってるのよ。
最近の若い子って、仕事の覚え悪いと思わない?
何度言っても同じミスするし、教える身にもなって欲しいわよね!」
(若いからって、一括りにするのはどうかと思いますけど)
「休みだってそうよ!
チーム内で一緒に休み取ったら、他の人に皺寄せが来ることくらいわかりそうなものじゃない?
社会人なら、もう少し仕事の事も考えて欲しいわ!
ホント最近の若い子って使えないわよね⁉︎
小野田さんもそう思うでしょ?」
(さっきから若い子若い子って、私も彼女達と歳変わりませんけど?
彼女達に休みの許可を出したのは誰でしたっけ?
チームリーダーのあなたが許可を出したから、私はシフトを組んだんであって、私に愚痴こぼされても困ります)
「独身の男どもは、なんとか呼び出したんだけどね?
呼び出した私が出ない訳にいかないでしょ?
だから、旦那に早く帰って来る様に連絡して、子供置いて来たのよ
まぁ、旦那は課長だからなんとでも融通きくらしいから良いんだけどね?」
(すいませんね…ウチのチームがご迷惑お掛けしまして)
「菅原さんのお子さんって男の子でしたっけ?」
(前に“うちの子なかなかのイケメンなの”って写真見せびらかして話してた気がする)
「そう!高校3年の男の子と中学3年の女の子」
(へー、女の子も居たんだ…男の子の話しかしてなかったから、子供は一人だけだと思ってた)
「悟史って言うんだけどね?サッカー部のキャプテンで、主人に似てイケメンなの!
生徒会長もしてて、成績も良いから女の子にモテて大変なの!」
(へーそうなんですか…旦那さんの顔知らないし、あなたの子供がイケメンかどうかどうでも良いです。
私と同じ年頃だっていうなら、興味も湧きますけど)
「でね、よく長電話してて、相手はどうも女の子らしいの…」
(あーそれは彼女ですね!)
「中学迄はなんでも話してくれたのに、最近は全く話もしてくれないし、私が家にいる時は部屋に閉じこもって出てこないし…
何か悩みでもあるのかしら?」
「受験勉強で忙しいんじゃないですか?」
「でも、女の子とは話してるのよ?」
(さっきから息子の話ばかり…
本人が邪魔になると思えば、自分でなんとかするでしょ?
高校生なんだし?
それより、同じ受験生の娘さんの事は心配しなくても良いんですか?)
「携帯取り上げようかとも思ってるんだけど、あなたどう思う?」
(知らんがな!それは家族で話してよ!)
「…受験生ですか…大変ですね?」
「そうなの…受験生を持つ母親は大変よ?
塾の送り迎えはあるし、食事にも気をつけないといけないし、なんと言っても思春期でしょ?
色々神経使う事多くてね」
(うちの両親も随分気遣ってくれてたなぁ)
「…大変ですね」
「それでシフトの事なんだけど…」
(…出た!)
「…シフト…ですか?」
「受験が終わるまで、日勤だけにして貰えないかしら?」
(またこの話か…)

