篠原教授の部屋まで来た千夏だが、今までに無いくらいの落ち込み様で、いつもならノックなどしないが、この時ばかりはちゃんとノックをし、中から篠原教授の返事《こえ》を聞いてから、ドアを開けた。


「おじいちゃん先生ごめ…」
(パッカーン)「千夏っちゃんおめでとう!」

謝罪しようと思った千夏の言葉はクラッカーの音で遮られた。
何事かと目を丸くする千夏へ篠原教授から祝福の言葉が贈られた。


(えっ!? な、何事?)

「おじいちゃん先生、どうしたの…?」

「千夏っちゃん、良かったね? これで君も皆んなと笑顔で卒業だよ?」

(え? 笑顔で卒業? 私が??)


その時、なにを言われてるのか訳が分からない千夏は、キョトンと呆けた顔をしていた。


「おじいちゃん先生…?」

「さっき、木ノ下君から連絡があって、採用されたって教えて貰ったんだよ?」

(ええ? 私が採用? そんな馬鹿な…
だってあんな酷い受け答えで、受かる訳がない)

「おじいちゃん先生…それ…多分間違いだと思うよ?
だって私、自分で言うのもなんだけど、今まで受けた面接の中でも一番酷かったもん?」

(思い出しただけでも、あの酷さは、恥ずかしさを通り過ぎて自分の不甲斐なさに怒りさえ覚えるよ…)

「千夏っちゃんの内面の良さが伝わったんだよ?」

(私の内面? あの面接で??)

「今夜は御祝いに、私が腕によりをかけて美味しいものをご馳走するよ?」