この男、危険人物につき取扱注意!


高原に近くの駅まで送って貰った千夏は、ふと自分の手元に視線を落とした。
そして、自分が何も持ってない事に気が付いた。

(あっ…財布
倉庫から…そのまま連れて来られたから…
どうしよう…)

「あの…高原さん…
会って間もない人に頼む事じゃ無い事は、重々分かってるんですけど…」

「はい、なにか?」

「お金貸して下さい‼︎
帰ったら必ず返しますから!」

「…いかほど?」

「五千円!…イエ…一万円貸して下さい…すいません」

「一万で足りますか?」

「はい。…ぁ…電車賃もなんで…出来たらもう少しお借り出来たら…」

高原はため息吐くと胸ポケットから財布を出し、あるだけの札を千夏へと差し出した。

「えっこんなに?
良いんですか?」

「差し上げるんじゃありません!お貸しするだけです。女性の買い物(こと)はよく分かりませんが、洋服だけじゃ困るんじゃないですか?
月の物だとかに……」

(月の物…?あー生理の事か?)

「生理なら終わったばかりなので、次来るのは…」

千夏を溺愛する男兄弟の中で育った為、千夏はこれまでその辺りの事に関しては、恥じらいを感じずに生きて来た。

「べ、別にそんな事教えて頂かなくても結構です!」

高原の方からふった話ではあるが、逆に高原の方が恥ずかしそうに顔を背けていた。

(だよね…ついお兄ちゃん達と話してるつもりで…)

千夏を溺愛する兄達は、千夏の体調管理までしており周期に近づくと仕事を休む様にと毎回煩かったのだ。

「そんな事より早く降りて下さい!
戻らなくては行けないんですから!」

「すっすいません…」

“帰ったら必ず返しますから!”と、高原に告げ千夏は車を降りた。

「さて、さっさと必要な物だけ買って帰ろう!
夕飯の支度、手伝わなくちゃね!」

駅に入った千夏の目に、飛び込んで来たのは若い男の子達の人だかりだった。

「…なに?なんかあるの?」

そして、その中央には金の時計台があった。