すまない…
俺の身勝手でお前に辛い思いさせて…


「…千夏…千夏…」

「ん…」

春樹の呼びかけに、ゆっくりまぶたを開けた千夏。


良かった…
気がついて…


「うさぎ、気が付いたか?」

「チーフ…私…どうして?」

「軽い日射病らしい」

まだ辛いであろう体で起き上がろうとする千夏の身体を、春樹は慌てておさえ寝てる様にと言った。

「点滴が終わるまでは、そのまま寝てた方が良い」

そう春樹に言われ、頭を少し起こし自分の腕を覗き見る様な仕草を見せた千夏は、そこで点滴に繋がれている事を認識した様で、支柱にぶら下がる点滴のパックを見つめた。

「すいません…私が余計な事を言ったばかりに…」

春樹の後ろから聞こえた坂下の声。


(坂下が悪いんじゃない…俺が全て悪いんだ。
俺の身勝手な行動が…彼女だけじゃなくこの坂下にも辛い思いをさせた)


「坂下さん…頭上げて下さい。
私が悪いんです。
なんの対策もしないで、暑い中外に居た私の自己管理不足です」


(まだ…このまま…
彼女を引き止めておいて良いのか…?
…でも…今手放せば…
もう…俺の腕には戻らない…
それが分かっていて…俺は手放せるだろうか…)


春樹は葛藤しながら千夏の額のタオルを替えていた。

「チーフ…こんな私で、お嫁さん役大丈夫ですか?」

「ん…?
大丈夫もなにも…今更他の(ひと)に頼めないだろ?
親父にも会わせてるんだから?」


(お前じゃないと意味が無いんだ…)


「そう…なんですけどね…」

「うさぎに頑張って貰わないと、俺は困るんだが?」


(俺の為に…こんなに頑張ってる彼女に…
これ以上…俺は…何を頑張れと言うんだ…)


「そう…ですよね…」

そう言いながら眠りに入って行く千夏を、春樹は拳を握りしめ見ていた。