一緒に笑っていた筈の真司は急に真顔になると千夏へと詰め寄った。

(え⁉︎ なになにどうした?)

「ホントにホント、若頭と結婚するんですよね?」

二人の結婚は余程信じ難い出来事なのか、何度も何度も真司は念を押し聴いた。

(ゔ…怖い…真司さんちょっと怖いよ…)

「嘘じゃないですよね⁉︎
嘘じゃないって俺達に誓って下さい!」

(どうしよう…婚姻届にはサインもしたし、ハンコも押した…でも…好きな人が出来たら私はここを出て行く。それは明日かも知れないし、一ヶ月後、半年後…一年先かも…それまで彼等を騙す事になるんだ…)

「千夏さん!」

(こんなに真っ直ぐな目で見つめられて…嘘でも誓える…)

「さっきも話しましたけど、他の組の奴等から馬鹿にされて…
若頭だけじゃ無く坂下の兄貴も結婚しないから、二人はそう言う関係なんじゃないかって噂されてて…」

「坂下さんと噂…?」

「若頭はいつも坂下の兄貴と一緒にいますし…」

「それは…仕事であって…」

「はい。仕事だって事分かってますけど…
ラブホテルに、坂下の兄貴と二人で入っていくとこ見たって他所の組(奴等)もいるし…
あの藪先生とも二人でラブホテル街を歩いてるとこ、うちの兄貴達が何度か見たって…言ってました。
達兄も見たんですよね?」と真司は達也に同意を求めが、その問いかけに達也は何も答えず顔を顰めていた。その姿が全てを物語ってる様に千夏には見えた。

(そっか…達也さんも見たんだ…
ショックだったよね…)

「でも、でもね?
今って同性のカップルも多くなったじゃない…?」

「千夏さん‼︎」

「は、はい!」

「若頭がゲイだって言うんですか⁉︎」

「そ、そうじゃなくて…一般的にも受け入れられて…漫画も多くなったし…ドラマだって…だから同性愛者を悪く言うのは…ドウカト…」

「別に、俺達はゲイが悪いって言ってるんじゃなくて、若頭を馬鹿にされるのが嫌なだけです!」

(でも…本当は、坂下さんとそういう仲なんだよ…たぶん)

「これで噂も払拭されますよね⁉︎」

(よほど辛かったんだよね…
大切な人達を馬鹿にされて…)

「う、うん!当然でしょ!
若頭には、ずっと私と言う女がいたんですからね!
何処のどいつがそんなデマ流したか知らないけど⁉︎
それに、藪先生と一緒だったのだって、往診の帰りかなんかに、たまたま一緒になっただけかもしれないでしょ?」

「そ、そうっスよね?」

千夏の話に二人はホッとした顔を見せていた。

「千夏さん、早く赤ん坊つくって組長に見せてやってください!
そしたら、組長も少しは元気になると思いますから!」

(え…そ、それだけは、いくらなんでも無理かな…
でも、今朝の組長…病人だっていうのに、私を摘み出す力ときたら、ハンパなく凄かったけど…
私を軽々持ち上げたもんね…
でも、それが極道なのかな…)