春樹の物が蔵の中に残っていると聞いた千夏は、二人に蔵へと案内を頼んだ。
達也が蔵の錠を開け、重厚な扉を真司がゆっくり開けると、冷たい風が千夏の身体をかすめた。
(…うっ⁉︎…今のなに?
なんか、私に入るなって、蔵に拒絶された気がする。
ま、まさかね…
閉めっぱなしだった扉を開けたから、きっと蔵の中の空気が動いただけよ!)
「暗いから気をつけて下さいね」
千夏を気遣う達也の言葉に何も応える事なく、千夏は蔵の入り口で動けずにいた。
(気のせいかな…土蔵って外気との差があるって聞いたことあるから…)
高窓から入る光を頼りに、達也達は奥へと入って行く。
「この中って、凄く涼しいね!」
「ええ、でも流石に今日は、いつもより暑いです」
達也はそう言うと頭上の窓を見上げた。
「窓があってもあんな小さな窓じゃ…」
(あれ…まだ閉まってる…さっきの冷たい風ってどこから…)
「でも…若頭に怒られませんかね?」
「え、どうして?」
「全て捨てろって言われてたから…」
「全部?」
「ええ。若頭が残していった物全て…」
(どうしたチーフが捨てろって言ったのかは分かんないけど、残ってるなら使えば良い。
お客さん用なんて使わなくても、家族なんだから…
その方が亡くなったお母さんだって喜ぶと思う。
きっと…)
「確かこの辺に入れた筈…なんですけど」
幾つかの古い段ボール箱を開け、春樹が使っていたマグカップを達也達二人で探すが、なかなか見つからない。

