「…あ…あの…すいません…
姐さん、起きてらっしゃいますか?」
「え?あ、はいっ!」
襖越しに聞こえて来た男の声。
千夏が慌てて襖戸を開けると、正座して恥ずかしそうに下を向いて座ってる若い男の子が居た。
「…兄貴達が…」
「?」
耳まで真っ赤にさせそこに座る男の子は、まだ寝ているであろう千夏を呼んで来いと、兄貴分達に呼びに寄越されたのだ。
その際、兄貴分に何やら吹き込まれたらしく、まだ若い男の子は顔をあげれずに居たのだ。
「しょ、食事の用意が出来てるから…ね、姐さんを起こして来いって…言われまして…」
(あ、しまった…ど初っぱなからやっちゃった…)
「呼びに来てくれてありがとう。
直ぐ支度するから少し待ってて」
千夏はそう言うと、化粧ポーチの中から小さな手鏡を出し髪を整えた。
(こんな小さな鏡じゃ、まともに見えやしない)
「ねぇ君、名前は?」
「…拡です!」
「ひろ君か…?」と言って、千夏は拡の横にしゃがんだ。そして、「どういう字?」と聞いた。
「…えーと…こうやって…」
拡は自分の掌に指で描いて見せた。
「てへんに広いで拡君か?
私は千夏!分かんない事色々教えてね?」と言って、千夏は握手をしようと手を差し出した。
「は、はい!」
だが、拡は返事だけすると長い渡り廊下を逃げる様に走って行ってしまった。
(あーあ…逃げられちゃった…
え⁉︎…
私のノーメークってそんなに見れない顔⁉︎)
千夏は慌ててメークをし、着替えを済ませると気付いた事があった。
(あ、私どこ行けば良いの?
家の中分かんないじゃん!
まぁ、取り敢えずこの廊下を進めば行き当たるかな…?)
呑気に鼻歌を歌い、夏の空を見ながら長い廊下を千夏は進んだ。
(今日も暑くなりそうだわ…)
すると、突然千夏の眼に大勢のいかつい顔をした男達の顔が飛び込んで来た。
「え⁉︎」
千夏の姿を見るや、食卓を囲む男達全員が、千夏の方を見て挨拶した。
『『姐さん、おはようございます!』』
「え?あ…」
(姐さんって私の事だよね、多分…)
「…お、おはよう御座います」
千夏は慌ててその場に正座をし、頭を下げ挨拶をした。
「もう良いから、早く座れ!」
千夏に声を掛けたのは、春樹だった。
「あ、はい…」
(座れって…ここ…?)

