他校生

「オイ、コイツな、月バスの」

コンビニを出ると、皆待っててくれたのか
渕上がそう言った。


あ、やっぱこの子だったんだ。
てことは、渕上の彼女……なのか?





「え、ああ、後で返すから待ってて。ごめんね借りちゃって」

ひとまず、借りた事に礼を言う。


目の前の子の返事を待ってたら


渕上がさっさと歩き出し、石橋も、その他の友達も。



その子と二人になった。

「アレ?行っちゃったね」


いいのか?

彼女……


で、何も返ってこないし、何だ?


ただ見つめてくる事に不思議に思って、俺もこの時初めて、ハッキリと顔を見た。


そのまま……動けなくなった。


「え!あ!!あぁー!!」

あの子だ!

そうだ、こんな顔!!

「ちょ、待って、森さん!?」

「違いますけど」

「……違うの?」

待て、人違い?

セーラーだ、制服が違う!N高!?

「下の名前は?」

朱里(あかり)

「あれ、全然違うな。産まれた時からN高?」

「産まれた時から?えっとこの4月からN高ですけど…」

「あ、そうだな。ど…どういう事だ?」

何言ってんだ、分からんねぇ。

あの子、あの子だよな?

「分かりません」

話す?いや、時間を見ると、早く食わねぇと午後の部が……

「ヤバい、時間がねぇな」

そう言って、ペットボトルの蓋を開けると一口飲んだ。渇く、喉が

「ちょっと動揺しすぎた、ごめん!帰りにちょっと話せる?」

きょとんととしてる。そらそうだ。

「月バスも返さないと。……えっと、アイツとは…あ、石橋とは中学が一緒なんだっけ?」



「そう、ふっちーも」

「うん、この前聞いた。俺もふっちーとはこの練習で友達になった。ポジション一緒だから、いっつもアイツをマークすんの。上手いよね、ふっちー」



そう言うと、彼女が笑った。

「え、何?」

「ん、ふっちーも同じ事言ってたよ。この3日間、お互いにいい刺激になったんだね」

「……そうかも。3日間見に来てんの?」

「え、あ、うん。ふっちーいるし」

「あ、はーん…そういうこと」

ああ、頭がついていかねぇ。

のに、胸が痛い。

「え!?いや、違うよ、そーゆーのじゃなくて!」



「モテそうだ」

そう言うと

今度は声を出して笑った。

「あはは!何を言ってるの、ふっちーも…あ…」

そうだよ、名前も……知らない。



「俺?工藤快晴でーす」

そんな、存在だった。


「宜しく、朱里ちゃん」

「宜しく、工藤くん」


ふわっと笑った朱里ちゃん。

聞きたい事はいっぱいある。

今は……渕上との事は深く考えたくない。


「急ご!」

そう言って体育館へと戻った。



終わってから、全部、終わってから聞く。


そう自分に言い聞かせた。