部活が終わって家に帰ると

取り込まれた洗濯物の山からハンカチを取り出した。


アルファベットも読み間違えてない。

アルファベットなんて、小学校で習った。


高校になってまで間違わねぇ。



「どうしたの、珍しいわね」

母親からは変な目で見られたけど、そのハンカチは自分でアイロンを当てた。




バンソーコーはもう必要ないくらいで
今日は貼ってない。


ーーーーーー

翌日、アイロンを当てたハンカチを持って


昨日同様に探した。


あの子はいなかった。



ボウタイ……
他の学年?

いや、俺の学年のカラーだった。


1つ上の学年に“森”はいたけれど……

男子だった。



それから………毎日探した。

でも、いないもんは、いない。




「俺のハナエちゃんは……どこ行ったのかねぇ……」


自分の頭がおかしくなったのか?

バンソーコーも捨てずに置いとけば良かった。


夢か?


幽霊か?


本当にいたよな?


意味が分からねぇ。




「何?お前の、好きな子、ハナエちゃん?」


「あー……多分、そんな名前。ハナコちゃんかもね」


学校の七不思議、トイレの花子さん。

それくらい、不思議な出来事だった。


いないって、分かっても、他クラスに顔出したりして……探した。



焦がれるって、こういう事か。


会いたいのに、会えない。



部活終わりの夕暮れ

本屋の前を通りすぎる。



ここでなら、また会えるのか……


何だったんだ。


あの子は、どこに行った?

あの子は誰なんだろう。



そんな日が何日か続いた。



「工藤って、オープンだよね」

席替えで隣になった石橋は……確かに可愛い子だ。


佐々木は早々に振られたらしいけど。


「オープンか?」

「好きな子いるって有名。何人もそれで振ってるでしょ?」

「何人って……そんな事ないけど、石橋も、だろ?」

「え、あ、はは…」

石橋は恋愛の話は苦手っぽかった。


それ以外は話しやすい子で、隣の席で良かったと思ったけど


まぁ、それだけだ。


いつでも返せる様にポケットに入れてたハンカチは……

カバンへと移した。


このハンカチが無ければ、夢だったのかと思う程に

あの子は……どこにもいなかった。



「なぁ、このへんに同じデザインの制服の高校ある?」

「はぁ?ないでしょ」

「……だよな」


どこに気持ちを持っていっていいか、もうさっぱり分からなかった。