翌朝、登校早々に担任捕まえて聞いた。


「先生!うちのクラスに森さんている?」

「朝は、何て挨拶すんだ?」

「お早うゴザイマス!」

「おー、いないぞ」

「そっか。あ、先生、挨拶は?」

「お早うございます」

「はは!ありがと、じゃね!」


うーん、やっぱり他のクラスか。



次の休み時間にするか。

そう思って席に着く。


クラスメイトの佐々木が


「なぁ、工藤って彼女いんの?」

急だな、と思いながらも


「いないけど……」そう答えた。いないから。そのまんま。


「マジ!?何で?」

「何で?いや、いないもんはいないだろ」

「工藤に彼女いないのは、何か嫌だな。作れよ!」

「むちゃくちゃだな、お前」

「好きなヤツいないわけ?そろそろみんな動き出す頃だろ?」

「動き出す?」

「告り、告られ……」

「あー……」



頭に浮かんだのは、昨日のあの子。

そうか、彼氏いないとは限らない。


急に焦る。



「このクラスじゃ、アレが可愛いよね、石橋紗香」

佐々木の視線を辿る。

顔立ちのハッキリした……女子。


「ふぅん、お前、石橋狙い?」

「まぁ……」


何だよ、わざわざそれ言いに来たのかとため息


「あ!」

「何だよ」

「他クラスでは?可愛い子!」


そうだ、可愛いんだから、コイツがチェックしてないわけもない。

だから、そう聞いた。



「あー……えっとなぁ……」


佐々木が挙げた名前の中に“森”はいなかった。


……あれ?
あの子は可愛いよな。


普通に可愛い。


普通って何だ、可愛い、可愛かった。



「森さんは?」


「森さん?知らねぇ、可愛いの?何組?」

「いや、知らないんだけど……」

「何だよ、それ。お前、その子が好きなわけ?」

「あー、そうなんだ」


佐々木がそれにホッとして


「探しとく」
って言ってくれた。



直ぐに、佐々木が信じられない事を言う。



「なぁ、この学年に“森”なんていないけど?」


……嘘だろ?

何で?


信じられなくて、1クラスづつ探した。


1ヶ月で転校とか?


学年主任の先生捕まえて聞いた。



「いない」

って言われただけ。



嘘だろ?

アルファベットの読み間違い?


念のため、佐々木が名前を挙げた

“可愛い子”もチェックしたけど……


違う。


というか、顔も覚えてる。

近くで見たし、ハッキリ覚えてる。



いない。

今日は休み……なのか?