ふっちーは、バスケの強いK高に行くんだと思ってた。


私は進路をK高にして提出した。

好きな男で進路を決めるのもどうかなって思ったけど

今の私にとって、それくらい大事な事だった。



一番の仲良しの朱里がN高に行くって言っても譲れなかった。



「ふっちーの進路希望、N高だよ、紗香」


朱里からそう聞かれた時はずっこけそうになった。



「え!?え!えぇ!?何で?バスケならK高の方が強いでしょ?」


「最近、N高も強いんだって」


「そうなの!?じゃあ、私もN高にする!」


まだまだ、進路希望なんて変更可能な時期だった。



いつも言い合いしてる、渕上《ふちがみ》雅紀《まさき》を好きだって気づいたのは……


この男に“彼女”が出来た後だった。


そうなれば、私の気持ちなんてコイツにバレる訳には行かない。



そもそも……
私の気持ちなんて……


無いものにしなきゃ、ならなかった。




進路の変更も最終となった時期。

私はまだ迷ってた。


会えば、忘れられない。

会わなければ……



「石橋も同じ高校受けるんだろ?」

ふっちーからそう聞かれ


「は!?何であんたと同じとこ受けるのよ、ち、違うから!」


まだ迷ってた私は……

K高に行くことになった。



受験が終わる頃、ふっちーが彼女と別れたって聞いた。


よくよく聞くと……

もうとっくに別れていたらしい。


ほんの一瞬付き合っただけだったらしい。



諦めなきゃならない気持ちは

諦めなくてもいいんじゃないのって気持ちに変わって……


いや、元より……


全然、全然、ぜんっぜん!

諦められて無かったんだけど。



K高の合格発表。受かってた。

N高の合格報告。受かったって。



「お、石橋!受かった?俺も!お互い良かったなぁ」


サッパリとした笑顔でふっちーがそう言った。


う、何あれ。

何あれ。


別の高校なのに。



もういいよ、新しい高校で、私も新しい恋をする!


そうする!


きっと、そうするんだからね!!




ふっちーの背中を睨みつけて、私はそう決心した。


そう決心したはずだった。



この気持ちなんて、会わなければ……

消えるものだと、思っていたから。



グレーのシャーペンは一番使いやすい。


ふっちーとお揃い。

ふっちーを真似て同じのを買った。



勝手にお揃いペン。


ああ、全然忘れられないや。