昼休みになって

朝、工藤くんにスタンプしか返してない事を思い出した。


結局、悩んだ末に

皆でプリッツを摘まんでいる写真を送った。


『ロースト派』の言葉を添えて。


『俺も、ムックのやつが旨い』


……今度はムックのやつを買おう。


『でも、少ない』

『2箱買おう』

『写ってる手、渕上?』

『うん』




それきり、メッセージは途絶えた。

何かまずかった……かな?



昼休みが終わったのかな?



集中出来ない事に気づいて

授業に集中した。



目指すはF大!


今度塾の先生に相談しよう。


板書をノートに書き写した。




HRが終わると

『そっちも終わった?』
『こっちは、今から部活』


そうメッセージが届いて、ホッとした。



『うん、今日は塾だよ』

『目指せF大!』


工藤くんから着信があって、慌てて門から出た。


「はい!」

「……」

「あれ?」

「……あ、ごめん。何か…本当に付き合ってるんだなって」

「うん」


電話の声だと、少し違って聞こえる。


「やっぱ、うらやましいわ、同じ高校!」

「……さっきの写真?」

「そ、俺も一緒にプリッツ食いてえーってなった」

「今度、一緒に食べよ、ガチャピンのやつ!」

「はは!ムックだって!」



それから少し話して…


「部活だよね、頑張って……」

「あー、塾どこ?」

「進学ゼミ」

「おー、北口の?」

「うん」

「何時に終わんの?」

「8時半かな」

「OK頑張れ!」

「うん、工藤くんも」



……電話……くれたりするんだな。

電話を当ててた方の耳が熱い。



私から電話してもいいのかな……


1つ1つ聞きたくなってしまって


落ち着け、落ち着け。
何度も心の中で言った。





家に帰って、早めの夕食を済ませると塾へと向かう。


「あ、お母さん、今日…ちょっと遅くなる。先生に聞きたいことあるから」


「はい、気をつけてね」



玄関で靴を履いてると


「ハンカチ持った?」

おばあちゃんにそう聞かれて


「持ったよ!」

笑って答えた。


「ねぇ、朱里ちゃん、おばあちゃんのハンカチ1枚持ってない?見当たらないのよね」


「あ!借りてる……。おばあちゃん、お願い!あれ、ちょうだい!」


鼻先に両手を合わせて頼んだ。


「もう!おばあちゃんのは“ダサイ”って言うくせに。いいわよ、あげる」

「やったぁ!ありがとう、おばあちゃん。いってきまーす!」


あのハンカチは……

もう絶対、一生!大事にする。